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あとがき
高倉 公朋
pp.521
発行日 1985年5月1日
Published Date 1985/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205520
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- 文献概要
最近10年間の医療分野における科学技術の進歩は誠に目覚しいものがある。今回の特集にはmagnetic resonance imaging (MRI)を採り上げたが,この企画が持ち出された2年前には,未だ診断に役立つような画像は見られなかった。しかし今日では,わが国で既に30台を越すMRI機器が稼動し始めており,数年の間に全国に普及するであろう。脊髄・脊椎疾患の診断においては,myelographyやmetrizamide CTに優る情報を提供しているし,脳腫瘍や変性疾患等の診断にもCTで得られない数々の利点をMRIは示している。今後,超伝導MRIによって,神経疾患の診断は形態学的診断を超えて,脳のエネルギー代謝,核酸・蛋白質代謝等の生化学的診断へと向かっていくことは明らかである。Positron emissionCT (PET)についても同様のことが言える。確かに今日のPET画像は,未だ十分な診断情報を与えているとは言い難いが,数年先にはMRIと並んで診断に欠くことの出来ない重要性を帯びてくるであろう。
工学的技術が,このように加速されて進歩している背景には,1960年代のコンピューターの開発がその基礎になったことは言をまたないところであるが,このような新技術の開発は,常に大きなvisionの下に個々の科学技術と知識が総合的に結集されて完成するものである。
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