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特集 筋萎縮性側索硬化症の病因・病態
筋萎縮性側索硬化症の糖代謝
Carbohydrate metabolism in amyotrophic lateral sclerosis
長野 泰甫
1
,
登木口 進
2
Yasuho Nagano
1
,
Susumu Tokiguchi
2
1長野医院
2新潟大学医学部放射線科
1Nagano Clinic
2Department of Radiology,Niigata University School of Medicine
pp.17-21
発行日 1982年1月1日
Published Date 1982/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204873
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I.はじめに
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis,以下ALSと略す)を含めた運動ニューロン疾患(motor neuron disease,以下MNDと略す)における糖代謝異常は古くから示唆されており,筆者の一人(長野)も,ALSの有病率が著しく高いことで知られているグアム島に出張した際,同島の住民に糖尿病が多いらしいこと,そして,欧米人に比較して著明に血糖値が高いにもかかわらず,さしたる症状も訴えずに生活しているとのことをグアム記念病院勤務の内科医から聞き,同島のALS例における糖代謝の検索を思いたつた。
グアム島のALSにおいては,すでに,Poserら1)によりアルギニン代謝の研究が行なわれていたが,筆者らは,アルギニン代謝と糖代謝を同時に検索する目的で,同島のALSおよび同島特有の疾患と考えられているParkinsonism-dementia complex (以下PDと略す)症例に静注によるアルギニン負荷テストを施行し,血中のアルギニン値の時間的変化を検索するとともに,糖,インシュリン,成長ホルモンの動態を調査した2)。その結果,血中アルギニン値に異常はなかつたが,対照例に比較して,血糖の遷延とインシュリン分泌の有意な低下を両疾患群に認めた。しかし,筆者らは,現在,糖代謝の変化があるにせよ,二次的なもので,直接成因とは結びつかないであろうと考えているので,本稿では,これまで報告された関連論文の紹介と二次的変化であるならば,いかなる病変あるいは異常により生ずるのかという素朴な疑問について私見を述べ責任の一端を果たさせていただきたいと思う。
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