病気のはなし
筋萎縮性側索硬化症
国本 雅也
1
1東京大学脳研究施設神経内科
pp.220-225
発行日 1985年3月1日
Published Date 1985/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203283
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筋萎縮性側索硬化症とは
筋萎縮性側索硬化症は骨格筋の収縮活動をつかさどる運動ニューロンが変性し,そのために起こってくる筋萎縮症である(写真1,2).神経学領域では英語のamyotrophic lateral sclerosisを略してALSとも呼ばれている(以下ALSと呼ぶ).
図1はヒトの随意運動にかかわる神経・筋経路の略図である.随意運動をつかさどる神経細胞,すなわち運動ニューロンは大きく分けて2種類ある.大脳皮質運動領野にあって運動の司令を出す第1次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と,この司令を受けて直接筋肉を支配している第2次運動ニューロン(下位運動ニューロン)である.この第2次運動ニューロンは脳幹から脊髄に分布しており,脊髄では前角に存在する(図2).第2次運動ニューロンはおのおの一定の筋肉のいくつかの筋線維に突起を送っており,両者で一つの機能単位を成している.そこで,一つの第2次運動ニューロンとそれが支配する筋線維群とをまとめて神経筋単位(neuromuscular unit)と呼ぶ(図1).ALSの病変はこの第1次および第2次運動ニューロンに選択的に起こり,特に第2次運動ニューロンの変性により筋萎縮が生ずる.
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