Japanese
English
特集 筋萎縮性側索硬化症の病因・病態
筋萎縮性側索硬化症と金属代謝
Amyotrophic lateral sclerosis and metallic metabolisms
八瀬 善郎
1
Yoshiro Yase
1
1和歌山医科大学神経病研究部
1Division of Neurological Diseases,Wakayama Medical College
pp.7-15
発行日 1982年1月1日
Published Date 1982/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204871
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
1.はじめに(ALS成因をめぐつて)
一般に運動ニューロンが選択的に侵される系統変性疾患を運動ニューロン疾患(motor neutron disease:MNDと略)と総称し,筋萎縮性側索硬化症(amyotro—phic lateral sclerosis:ALSと略)は上位運動ニューロン(錐体路)と下位ニューロン(延髄運動核,脊髄前角)がともに侵されるMNDの中核的疾病である。中年以降に発病,主として孤発性であるが,家族内発病は,全症例の5〜10%にみられる。本邦紀伊半島南部,グアム,ニューギニア西部に,ALSの集積発病が知られている。ALSの多くは,2〜3年の経過をとるが,全例のほぼ20%は,5年以上生存する。発病頻度は,人口10万当り0.5前後の発病率で一定しているが,上述の多発地区では,最近10年余で確実に減少している(Reedand Brody 1975,上林ら1975)。これは,本病の成因を考える上できわめて重要な疫学的所見であり,多岐にわたるALS成因研究の中で(表1),外因関与の可能性を強く示唆するものである。
外因としていくつか検討されているが,外傷とALSの関係は,古くより注目されている。厚生省特定疾患調査研究班(椿忠雄班長)での既往因子の分析(近藤,1976)でも,患者群に外傷歴が有意に多いことが確認された。しかし外傷がALS発症にどのような役割を果すのかよく判つていない。その他,感染,中毒などの外因とともに内分泌,栄養,代謝障害なども研究されており成因に関する総説の記載も多い(Calmant1958,平山1975,八瀬1976,近藤1978)。
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.