Japanese
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原著 特別寄稿
実験網膜芽細胞腫—ウイルス性網膜癌
The First Man-Made Retinoblastomas
向井 紀二
1
Noritsugu Mukai
1
1Bowers Laboratory of Experimental Pharmacology and Neuropathology, Retina Foundation
pp.929-937
発行日 1974年9月1日
Published Date 1974/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203599
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I.発癌性アデノウイルス
1953年ボストン生れの幼児の扁桃腺から,Roweらによって分離培養されたアデノウイルス12型は,当初,風邪の不定の症状を惹き起すいわゆるみなし児ウイルスの一つであろうと考えられた。事実,33型まで同定されているアデノウイルスの或るものは上気道の炎症の他,髄膜炎,膀胱炎,下痢などの不定の症状を惹き起すが,宿主に免疫欠損でもない限り重篤な感染の原因たりえない。アデノウイルスはヒトだけでなく,ほとんどすべての動物に存在し,大きさ約70mμの正20面体(第1図A, B),表面は252個の蛋白粒子(capsomeres)からなり,正20面休(icosahedron)の12の角には細い桿状の突起(penton-capsids)をもち,ウイルス粒子(virions)を形成する核蛋白はDNAのみ。したがつて培養細胞(他,permissive cells)の核内で増殖成熟し結晶状の配列を示す(第1図C, D)。今日まで,アデノウイルスに特有な感染性核酸や,DNA-polymeraseの抽出には成功していない。
ヒトのアデノウイルス33型のうち,12,18,31型が強発癌性にランクされ,就中,12型はTrentin・矢部ら(1962年)が新生ハムスター仔の静脈内接種により高率に悪性腫瘍を発生させて以来,広くその発癌機序と標的細胞に関するアプローチが続けられてきた。
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