書評
—南雲 仁一 編—システム工学講座 9—生体システム
朝倉 哲彦
1
1東京女子医科大学
pp.1189
発行日 1972年9月1日
Published Date 1972/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203189
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生物現象を理解するのに,機械論的思考形式を導入した立場は,ずいぶん古くから存在した。ラ・メトリーの人間機械論がその最たるものであろうが,近年でも,われわれは生理学biophysicsをはじめとし,いわくレオロジー,いわく人間工学,いわくサィバネティクスと,物理学・工学に基礎を置いた思考方法,実験方法を,生物学・医学の中に取り込んできた。数量的客観化を志向する自然科学の一分野としては,当然の歩みであつたといえよう。
しかし,これらの方法のすべてが必ずしも,われわれの要請をみたしてくれた訳ではない。生物には生命とともに死があり,また物理とは別の,生物特有の時間系が存在するのであるから,機械系と同日に論じることのできない事象に遭遇するのは己むを得ないことといわねばなるまい。
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