特集 脳幹の解剖と生理
司会のことば
時実 利彦
1
1東京大学医学部脳研究所
pp.438
発行日 1967年5月1日
Published Date 1967/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406202205
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脳は,脳幹を軸にして,これをとりまく二重構造の大脳皮質(新皮質neocortexと辺縁皮質limblc cortex)とによつて構成されている。これらの3つの部分は,送りこまれる感覚の情報を処理して,運動や分泌の指令として送りだす統合integrationの座である。そして,これらの統合の座に連結する求心性神経路と遠心性神経路とを一緒にして統合系とよぶ。したがつて,新皮質を統合の座にする新皮質系neocortical system,辺縁皮質を統合の座にする大脳辺縁系limbic system,脳幹(脊髄を含めて)を統合の座にする脳幹脊髄系brain stem-spinal systemの3つの統合系が区別できる。
これらの統合系は,生の営みをそれぞれ分担しているが,生の営みは,「いのちあつての物種」というように,まず,「生きている」といういのちの保障があつて,その基盤のうえに,「生きてゆく」という行動が展開されるのである。「生きている」という姿は,精神を伴わない静的な生命現象である。これに対して,「生きてゆく」という姿は,精神に操られた動的な生命活動である。「生きてゆく」生命活動はさらに,本能行動や情動行動による「たくましく」生きてゆく姿と,適応行動による「うまく」生きてゆく姿と,創造行為による「よく」生きてゆく姿とに分けられる。われわれ人間では,適応行動や創造行為がよく発達している。
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