特集 癌患者の栄養問題
司会者のことば
陣内 伝之助
pp.593
発行日 1966年5月20日
Published Date 1966/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203963
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癌患者の栄養の問題は,日常臨床家の遭遇するもつとも卑近な問題であり,かつ重要な問題である.それにも拘わらず,今まで等閑に付されていたもので,おそらく患者から問われても自信をもつて,こんな食餌がよいといえる人はほとんどないであろう.その証拠に,昭和39年度の外科学会のとき,癌の手術をいつもやつており,平素常にこのような質問を患者から受けているはずの外科学会評議員の人達に,胃癌術後の栄養としてどんな食餌を奨めているかというアンケートを出してみたところ,つぎのような結果がえられ,大部分は高栄養食,とくに高蛋白食,高カロリー食をとらせるという結果であつたが,確固たる根拠を挙げた人は一人もなかつた.このように,もつとも重要な問題でありながら,問題がむずかしいだけに,誰もが敬遠して研究しなかつたというのが本当であろう.
今日のシンポジウムで得られたことを,ごく総括的にのべると,癌患者では想像以上の代謝障害が見られ,一定の時期を過ぎると,もはや,いかに栄養を与えても,癌組織に取られるのみならず,体蛋白の崩壊も著じるしく,およそ栄養をもつて癌の進展を止めようなどということは考えられないけれども,しかしながら,実験的に高蛋白食は低蛋白食よりも,とくに腫瘍剔出後においては,担癌宿主の延命効果には有数であること,しかしまた一方高蛋白食は転移形成にはむしろ促進的にはたらくことなどが明らかにされた.
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