- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
【61】脳圧下降剤としての"フルクトンM"の効果に関する研究
(札幌医大脳神経外科)宮崎 雄二 松本 信勝竹田 正之
上昇した脳圧を下降調整する有力な手段の一つである滲透圧性脳圧下降剤について,われわれの教室では高張尿素液・高張マンニットール液と系統的研究を行なつてきており,理想的な滲透圧性脳圧下降剤の条件として,次の6項目を提唱している。第1は脳圧下降作用が迅速かつ強力であり十分な脳容積の縮少が得られること。第2は2次的圧上昇のないこと。第3は作用消失後速かに体外へ排泄され蓄積されないこと。第4は循環血流中に投与される水分量(薬剤の溶媒である)が可及的少いこと。第5はいかなる緊急時にも使用に耐え得るため完全溶液であること。第6は副作用のないことなどである。以上の条件に照らしてみるに,尿素はもちろん,マンニットールといえども水に対する溶解度が低く,投与水分量が800〜1000ccにもおよぶという欠点があった。この点を改善するべく,マンニットールと同じ6炭糖に属し,しかも高濃度に水に溶解し得る果糖について検討したところ十分な脳圧下降作用が認められた。しかしこれは3g/kgの投与において2次的圧上昇が30%にも見られたので,これを抑制し,かつ高濃度に溶解し得るという利点を生かすため,果糖を主剤としこれに少量のマンニットールを添加して上記の目的をはたせないものかと,果糖45%,マンニットール15%を含む混合液フルクトンMを作り研究した結果脳圧下降率は尿素液に等しく,持続時間,2次的圧上昇はマンニットールと同程度であり,水分投与量は300cc内外でマンニットールの1/3にすぎずまた尿量の増加もマンニットールの半分にすぎず電解質異常の危惧も少なく,理想に近い脳圧下降剤が得られたので報告した。
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.