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特集 低体温法
〔10〕脳腫瘍手術における人工冬眠法の応用—脳下垂体副腎皮質系反応の面よりの検討
ARTIFICIAL HIBERNATION IN SURGERY OF BRAIN TUMORS WITH SPECIAL REFERENCE TO PITUITARY ADRENOCORTICAL REACTION
魚住 徹
1
,
宮崎 正夫
1
,
北川 晃
1
,
松岡 健三
1
,
実川 佐太郎
1
,
武田 義章
1
Toru Uozumi
1
,
Masao Miyazaki
1
,
Hikaru Kitagawa
1
,
Kenzo Matsuoka
1
,
Satoru Hirokawa
1
,
Yoshiaki Takeda
1
1大阪大学医学部武田外科
1Dept. of Surgery, Osaka Univ. School of Medicine
pp.1124-1126
発行日 1962年12月1日
Published Date 1962/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201384
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われわれの教室では昭和31年以来,教室実川らの方法による人工冬眠法すなわち遮断カクテルを用いた薬物冬眠と低体温法を併用して,脳腫瘍手術およびその術後を管理している。その目的とするところは術中出血量の減少,脳浮腫の防止,および生体反応の軽減緩和などでこれにより術前状態の悪化した症例や脳深部手術の可能性を拡大しかつ脳浮腫による合併症を防止しようとするものである。現在までに23例の脳腫瘍手術に人工冬眠法を応用してかなり良好な臨床結果を得ているが今回は脳腫瘍手術が生体におよぼす影響を脳下垂体副腎皮質反応の面から追究し,人工冬眠のこれにおよぼす影響を常温下手術と比較しつつ検討したのでここに報告する。
われわれの人工冬眠の方法は,気管内挿管下エーテルでIII期2相の麻酔深度にいたつて遮断カクテルM1(クロールプロマジン50mg,プロメタジン50mg,オペリジン100mg)の分割静注を開始した後表面冷却を開始する。冷却開始後約1時間で直腸温28〜30℃まで冷却しこの温度で維持しつつ手術を行なう。術中カクテル使用量は1〜2M1,術中血圧は平均30mmHgの低下を示す。次に復温の間題であるが術後の脳浮腫の発生という立場から考慮すると低体温法による脳腫瘍手術においては復温は調節しつつ緩徐に行なつたほうがよいといわれているので術後は遮断カクテルを漸次減少しつつ筋注し軽度の冷却を加えながら術後24〜48時間かかつて直腸温37℃に復温せしめるという方法をとつた。このような型の人工冬眠法の適用により術中血圧および体温の維持の安定性,出血量の減少をみており,また術後著明な脳浮腫や過高熱をきたした症例を経験しない。
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