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特集 痛み
三叉神経痛に対するアルコール注射療法後の神経麻痺性角膜炎の発生に関する臨床的ならびに実験的研究
CLINICAL AND EXPERIMENTAL STUDIES ON THE ETIOLOGY OF THE KERATITIS NEUROPARALYTICA
岡本 英三
1
,
岡 益尚
1
,
松岡 健三
1
,
武田 義章
1
,
徳永 篤司
2
Eizo Okamoto
1
,
Masuhisa Oka
1
,
Kenzo Matsuoka
1
,
Yoshiaki Takeda
1
,
Atsushi Tokunaga
2
1大阪大学医学部武田外科
2芦屋病院外科
1Dept. of Surgery, Osaka University Medical School
2Dept. of Surgery, Ashiya Hospital
pp.109-111
発行日 1962年2月1日
Published Date 1962/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201197
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Härtel・小沢以来,われわれの教室において治療された三叉神経痛患者数は,総計1679例に達した(第1表)。アルコール注射療法施行延回数は1915回である。これらの患者について神経麻痺性角膜炎の発生頻度を調査すると,全部注射で7.5%,三叉神経の第1枝に麻痺をきたさないようにしたところの部分注射例でも1.8%に角膜炎の発生をみている(第2表)。
三叉神経病に対する各種の手術療法と麻痺性角膜炎の発生頻度とを比較すると(第3表),KrauseのGasser神経節全剔除術においては,その約半数に発生している。Frazierの知覚根切截術では,全切截で10ないし15%,部分切截でも5ないし10%にみられている。しかるに,Gasser神経節にまつたく触れることなく,後方経路よりするDandy氏法では,全切截を行なつても,角膜炎は発生しないと報告されている。このように,三叉神経に対する各種の侵襲方法が角膜の知覚麻痺を起こすことは周知のことであるがたとえその程度が同じであつても,侵襲部位の違いによつて,このように角膜炎の発生に差違のあること,また角膜の知覚麻痺を起こさない程度の部分的侵襲でも角膜炎を起こしている事実は,麻痺性角膜炎の原因として,単に角膜の知覚脱失のみでなくそこにいわゆる栄養神経のごときものを想定せざるを得ないのである。今日栄養神経なる言葉は,厳密な意味では存在せず,その機能は植物神経に課せられている。かかる観点より,われわれは家兎を用い,角膜の植物神経分布を鈴木氏鍍銀法を用いて検索した。
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