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特集 脳の血管性疾患
〔6〕脳血管傷害の発生ならびに抑制機序に関する実験的研究
THE EXPERIMENTAL STUDY ON THE ACCELERATING AND INHIBITING MECHANISM OF CEREBRAL VASCULAR DISEASES
相沢 豊三
1
,
長谷川 恒雄
1
Toyozo Aizawa
1
,
Tsuneo Hasegawa
1
1慶応義塾大学医学部相沢内科
1Dept. of Internal Medicine, School of Medicine, Keio University
pp.1023-1031
発行日 1962年11月1日
Published Date 1962/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201364
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はじめに
近年老年者の人口が年々増加の傾向を示していることは,わが国のみならず欧米諸国においても共通した現象であり,老人病による死亡率もこれと平行した上昇が認められる。脳卒中とくに脳血管傷害は老人病の中でもつとも重要な疾患のひとつであり,これまで臨床および病理学を中心とした立場より,数多くの研究がかさねられて今日におよんでいる。その発生機序については,この疾患の予防および治療が未解決であるだけに,最近とくに注目されつつあり,1800年代より始り1930年代にいたる間に一応の完成をみた病理学的にみた発生機序の研究1)〜11)に若干の検討が加えられようとしている。すなわち,人を対象とした臨床および病理学的研究にはおのずから限度があつて,発生機序における種々な因子の分析が得がたいことこれら因子間の相互関係および重要度も判別することが困難であること,ならびに抑制の機序についての追求がむずかしいことなどが存在する。この方面の研究にはこれまでの臨床病理学的研究と発生機序に直接または間接影響をおよぼす因子を加え,脳血管傷害がどの程度に起こりうるか,またいかなる形態の脳血管傷害が発現するか,発生機序に関与する因子と逆の関係にある因子を加えた場合には,はたして抑制の機序が成立するであろうかなどの研究面が必要である。とくに後者の研究は,現在もつとも要望されるところであつて,動物を用いた実験的研究の発展とともに進められつつある。著者は最近この方面の研究を行なつており,犬を用いた実験的脳血管傷害の発生実験の立場から,その発生ならびに抑制に関する機序の問題を述べてみたいと思う。
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