Japanese
English
講座
N2O法による脳循環研究の動物実験に就いて
Experimental studies on cerebral circulation by N2O method
相沢 豊三
1
,
滝塚 久志
1
Toyozo Aizawa
1
,
Hisasi Takizuka
1
1慶大内科
1Internal Medicine, School of Medicine, Keio University
pp.229-238
発行日 1957年4月15日
Published Date 1957/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200483
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
緒 言
近年Kety及びSchmidtによつてFickの原理に基くN2O法が案出せられ,以来脳に於ける諸疾患の病態を間接的に観察する事しか出来なかつた立場を,脳の循環及び代謝面を通じて直接に而も定量的に観察し得る立場へと導くに至つた。最近では欧米はもとより我国でも漸次本法が用いられ,諸種脳疾患の病態生理面に多数の新な知見が加えられつつある。N2O法の最も特徴とするところは,脳循環諸量を人体で何ら障碍を遺すことなく測定し得る点であるが,臨床家にとつて医学上最も要望される重篤な脳疾患の病態生理の解明に,時としてその病像より本法を実施し得ない場合がある。更に脳の機能,脳の血管構造及び脳組織構造と対比した循環及び代謝動態を明かにする為にも,動物実験という方法を選ばざるを得ないのである。
従来脳循環の研究に主として生理学的及び薬理学的立場より,所謂直接法を用いた研究は数多くなされたのであるが,吾々が最も要望する前述した場合のような,脳の病態生理を観察するという立場の動物実験的研究は見当らないようである。かかる場合には特に同一実験法によつて臨床と動物実験を結ぶ研究が望まれ,現在ではN2O法が最も適当と考えられるので,N2O法による動物実験的研究の一端として,先ず動物実験に於けるN2O法の実際という問題を述べ,この方面に興味を持たれる方々の参考としたいと思う。
Copyright © 1957, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.