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特集 定位脳手術
不隨意運動症について—神経病理学の立場から
INVOLUNTARY MOVEMENTS FROM NEUROPATHOLOGIC VIEWPOINT
白木 博次
1
Hirotsugu Shiraki
1
1東京大学医学部脳研究所病理
1Division of Neuropathology, Institute of Brain Research, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.43-47
発行日 1962年1月1日
Published Date 1962/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201184
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陣内教授の御講演の焦点の一つは,視床腹外側核と,いわゆるthalamo-capsular regionを定位的に手術すると,基本的な二つの不随意運動症,つまりrigidityとtremorとが減少あるいは消失する臨床経験である。しかし,このような特殊領域に病変が限られている病気についての神経病理的経験はきわめて少ないので,その臨床効果のもつ意味合いを正しく議論することはきわめてむずかしい。これについて,私がわずかにのべることができるのは,いずれも肝脳疾患,あるいはその疑いの濃厚な3剖検例にすぎない。
第1例は15歳の男子で,13歳から不活発,仮面状顔貌,歩行緩慢,嚥下,言語両障害,小指球萎縮ではじまり,14歳には手指シンセン,アジアドコキネーゼ,歩行困難,筋萎縮がすすみ,15歳には悪液質,浮腫,病的反射を示し,約2年4カ月で死亡したものであるが,肝機能はまず正常で,Kayser-Fleischer角膜輪もなく,筋萎縮性側索硬化症がもつとも疑われた。しかし剖検では,肝は小結節状の萎縮性肝硬変像を示し,実質細胞の核内にはカルミン陽性顆粒がみられ,一方,胞体中には鉄と銅顆粒を中等量に染め出すことができた。
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