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隨想
齋藤 潔
pp.20-21
発行日 1953年1月15日
Published Date 1953/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201154
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赤痢對策
近年の赤痢の大流行はどうしたことであろう。折角総死亡率は10%を割り,結核死亡半減祝賀会の後に残されたのが,消化器伝染病の流行である。伝染病の中で一番先きに撲滅されるのが例であると赤痢が,最後に残されたのは何というてもふしぎなこであつて,他の文化国に見ない現象である。もつともRosenauの著書の新版にアメリカでも,赤痢の罹病率の上つている地方があると書かれているが,これは南部の文化のおくれた農村のことであろう。赤痢が僅かに,農村に残されて小さくなつているのなら,別に不思議はないが,わが国のように,大都会に,大いばりで猛威をふるつているということは一考を要することであろう。都市衞生当局が赤痢予防対策をおこたつているのではない。この他の伝染病の撲滅には,着々と成果を挙げているからである。
赤痢に対する生物免疫学的な予防法が,いずれもその効果を期待し得ない過去から現在までの実状では,他国が予防に成功したのは主として都市の環境衞生施設の改善という集団衞生対策に従つたものであろうことは,何人も認めるであろう。
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