書評
—問田 直幹・内薗 耕二 編集—「新生理学」上巻
大谷 卓造
1
1京都大学
pp.834
発行日 1960年9月1日
Published Date 1960/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200985
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はじめて本書を開いたとき,私は軽い感激をさえおぼえた。それは日本の生理学界もここまで成長したかという感激であつた。どの頁も内容がぎつしりつまつていて,殆んど息をつくひまもない。ちようど,期待していた外国の新刊書をはじめて手にして,ページをめくるとぎの感激に似ていた。
本書は分担執筆の形式をとつている。執筆者にそれぞれその人を得たことが本書を成功に導いた第一の原因であろう。執筆者はいずれも,あるいは既に世界の生理学の進展に多大の貢献をした人であり,又あるいは近い将来に疑なく貢献するであろう人達である。どの項をみても,執筆者のオリジナルの業績がほどよい程度に収録されていて,よく日本で出来た生理学書の特徴を誇示している。こんな場合,執筆者自身の業績が少しでも誇張して過剰に紹介されると,書物の客観的な価値はたちまち激減してしまうのが常であるが,幸い本書は各執筆者の知と慧眼によつてその弊から救われている。内容の新鮮なことはいうまでもないが,量においても英米の標準の教科書であるFultonやEvansを遙かに凌いでいる。
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