書評
—問田 直幹・内薗 耕二 編集—「新生理学」が出た
若林 勳
1
1東京大学
pp.678
発行日 1960年8月1日
Published Date 1960/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200961
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新生理学上巻は,動物性機能,本文787頁を(1)神経及び筋の一般生理学,(2)神経系生理学各論,(3)感覚,(4)運動,の4部に分け,20名の,大部分は新進の生理学者で,生理学教科書を書いていない方々が腕によりをかけて,各自お得意の部分を分担執筆されてできたもので,現在わが国で出されている教科書のどれよりも新しくかつ大部なものである。編者の序にうたわれるごとく,大学院の学生や若い研究者に程度の高い生理学の知識を与えるための教科書または参考書として編まれたもので,新しいトピックを豊かに盛つて,しかも古くて大切な知識を洩れなく網羅する方針が執られた。
生体研究の新しい技術として,放射性同位元素の利用,そのほかいろいろな生化学的側面の発達,細胞内電極法そのほかのエレクトロニクスによる電気的検索法の進歩,電子顕微鏡の応用による微細構造の追究等々といつたような武器が与えられて,生理学の未開の領野が開拓せられ,教科書は絶えず新しく書かれなければならず,極端にいえば,書かれて出版される時はやや古びてくるともいえる時代になつた。編者問田・内薗両教授の御苦心を察する次第である。これだけの頁に収まるために古典的な記述をどのように割愛するかが最もお骨の折れたところであろうと思う。
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