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あとがき
內村 祐之
,
小川 鼎三
,
齊藤 眞
,
冲中 重雄
,
紺野
pp.49-50
発行日 1950年1月1日
Published Date 1950/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200089
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- 文献概要
◇わが國最初のノーベル賞受賞者湯川博士とともに,リスボン大學の精神科教授エガス・モーニッツの名があつたことが注意を引いた。精神醫學からノーベル受賞者が出たのはマラリヤ療法の創始者ワグナー・ヤウレックに次いで二人目である。かつては近世精神醫學の祖師ともいうべきクレペリンがその候補に上つたことがあつたが,ついに實現を見なかつた。ノーベル賞は必ずしも最大價値のすべてを網羅するものではなく,華々しい受賞者のかげには,營々として地味ではあるが價値ある業績を殘している人々があることをわれわれは知つている。とはいえ現代に於ける最大の榮譽として拍手を送ることをもわれわれは忘れない。
モーニッツの受賞理由については詳らかではないが,おそらくロボトミーの創始に對するものではないかと思う。動脈寫の發展もまたモーニッツに負うべきもめであるが,これは一九二七年の舊事であるから,おそらく今回の受賞とは關係があるまい。ロボトミーの治療的効果については,個々の點にいたるとまだ充分な評價の出來る時期ではないと思うが,人間の腦髓に大膽なメスを入れて,精神機能に變革を與えることを創めたのは,何としてもオリヂナリティーと實行力を持つたものでなければ出來ないことで,私としてはこの點に大きな價値を認めたいと思う。この手技が將來更に發展して,新らしい大きな分野に組織づけられて行くとしたら尚更のことである。
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