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あとがき
荒木 千里
,
冲中 重雄
pp.373
発行日 1951年11月1日
Published Date 1951/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200248
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- 文献概要
日本脳神經外科研究會が出來,また本誌が發刊されて,逐年發展してきていることは,私は日本の學界として劃期的なことだと思う。何よりもいゝことは,脳,神經に關聯した各種の問題を,基礎・臨床の各科の人が,おのおのの角度から檢討することが出來るということである。
私が日頃感じていることは,例を外科にとると,日本外科學會では,外科の臨床に關する演説のほかに,解剖,生理,生化學その他基礎醫學的に演説が随分澤山ある。日本外科學會雑誌でもそうである。結局外科學會は外科に關する研究を發表するところというよりは,外科の教室でやつた研究を發表するところであるように見える。これらの演説も外科の教室でやつた研究である以上,何等かの意味で外科に關係ないことはないであろうが,差あたり外科に縁遠いように見えるし,また聞いている大勢の人達に,それを批判する力があるとは思われない。このようなことは外國の學會にはないことであろう。學會の演説としては,少くともそこで述べられる如何なる問題でも,聴衆のなかにその道の專門家がいて,正しい批判をうけることが出來るとい5のでなくては意味がない。外科學會などでは,外科を離れた問題の場合には,法螺の吹き放題ということにならぬとも限らぬ懸念がある。これは外科學會に限らず,他の學會にも多少とも當嵌まることではなかろうか。そうい5意味で脳,神經外科研究會など理想的な學會である。それで私はこれが日本の學會として劃期的なことだと思うのである。
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