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◇「腦と神經」も,第四號を刊行することになり,廣く親しまれる雜誌となつて來たことは喜ばしく,寄稿者に感謝に堪えない,話しの持合せのない小生であるから,編輯後記として,第二次世界大戰前,有名なHofrat Prof. Dr.H. Obersteiner先生の後をうけて,Wien大學神經學教室の主任教授をしておられた,Prof. Dr. Otto Marburg先生の御消息を茲で傳へたい,先生は日本に數多くの知己及び弟子をもつていられたから,此雜誌の讀者でも,先生の御消息を知りたいと思う方が多いであらう,昨年Prof. Dr. P Baileyさんが,日本を訪問された折,Wienよりナチに追われてNew Yorkに行かれた。Marburg先生の消息が心配になつたので,Bailey教授に尋ねた所,Montefiari Hospital, Gun Hill Road, N.Y.で働いておらるゝといふので,そこ氣附で手紙を出した所,先生の夫人Mrs. Malvine Marburg. 225 Central Park West N.Y.から御返事があつた。即ちMarburg先生は,御渡米されてから皆に親まれて時々Colombia Universityの方へも,講義に行つておられたが,御病氣にて一昨年暮御逝去されたとの悲報があつた。早速敬弔の手紙を夫人に出しておいた。此事を先生に御指導をうけられた方々に御報知したいと思つてこの頁を拜借した次第である。
◇わが國の科學界にしばしば附燒刃の臭ひがするのは殘念である。つまりその歴史が新しいせいであらう。神經學も「神經」といふ言葉が杉田玄白によつて初めて作られて解體新書(1774)で最初に公けにされたほどの新しさである。そのときには西洋では錐體路の交叉も發見された後だいぶ經つてゐた。
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