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緒言
母斑細胞の起原に就ては淋巴管内皮細胞説(V.Reeklinghausen),擔黒素細胞説(Ribbert),眞皮細胞説(Israel, Lubarsch, Jadassohn),表皮細胞滴落説(Unna, Krompecher, Kromayer, Wieting et Hamdi, Della Favera, Darrier)等の諸説があり,本邦でも夙に竹內(1921)は母斑細胞の原基を表皮細胞乃至毛嚢上皮細胞の胎生的異常増殖と看做した。Soldanの神經説(1899)は長らく忘れられていたが,Masson(1926)は頭皮の神經母斑が,皮膚の有髓神經に連接する神經起原細胞の限局性増殖に基く腫瘤であることを立證し,色素性母斑が觸覺終末に相當する母斑小體(corpuseule naevique)や葉状體(lâme foliacée),類神經(fibres neuroi-des),類神經束(faisceau neuride)等から成ることを示した。氏によれば色素性母斑はすべてNeuronaeviと看做される。伊藤教授(1946)はBielsehowsky-瀨戶氏變法を以てMassonのTrichrom染色法による研究を擴充したが,他方に於てLaidlaw (1932-1933)の系統發生學研究も甚だ興味が深い。氏によれば母斑細胞は本質的には感覺神經終末を含む眞皮内細胞集團であつて,爬蟲類や兩棲類の皮膚に散在する感覺性の色素斑(tactile spots)に相當するものである。即ち進化の過程に於て爬蟲類の感覺斑は哺乳類の毛嚢と變化したが,毛髪は元來1種の觸覺器で,有髪性母斑は爬蟲類の皮膚感覺器と哺乳類の毛髪性觸覺器との連鎖をなすものである。人體の皮膚から取られた任意の材料を以て之等の説を立證することは必ずしも容易でないが,著者は過日剖檢の際に1屍體から得た小母斑を鏡檢し,神經母斑に該當する所見に接した。
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