臨床實驗
球後視神經(視束)炎の經過,特に輕症慢性軸性視神經炎に就て
鈴木 宣民
1
1千葉大眼科
pp.418-422
発行日 1954年3月15日
Published Date 1954/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201817
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伊東教授1)が軽症慢性軸性視神経炎(以下慢軸)の存在を唱導するようになつてから既に30年に及ぼうとする。今日迄教室同僚によつて本症の臨床的或は実験的研究は多方面に亘つてなされ,本症が視能の面に少からぬ欠陥を有し,本邦青少年の実生活に見遁し得ない支障の原因となつておる事に就て強調して来た処である。此の点に就ては尚未発表の点も有り,私は何等かの機会に改めて発表紹介して置き度いと考えておる処である。然るに本症の存在と意義に就ては今日迄一部の人達を除いては余り認識されていないと云うのが実情であり,吾々は尠からず,遺憾に思つておる処である。就中最近の桑島氏の考え方からは其の感を深くするものであり,此の点吾々は教室に於て唱導して来た軽症慢軸の本態に就ては更に之が解明に向つて努力の必要を痛感せざるを得ない。勿論先に私2)3)が述べた処からもわかる如く,吾々の云う慢軸か欧米に於て多発硬化との関係に於て特に評価されておる球後視神経炎(以下球後炎)と画然と区別し得る様に其の本態とか原因が明らかにされておるとは考えていない。然し,今日迄吾々が知る限りに於ては本邦に云う慢軸就中軽症慢軸の大部分は欧米に云う球後炎とは本質的には可成りの相違が有るのではないかと考えておる。従って桑島氏4)も指摘する如く慢軸と云う病名をその物に或は吟味を要すべき点が少くないかもしれない。
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