Japanese
English
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腦外科の歴史(3)
History of Brain Surgery
齋藤 眞
1
Saito, Makoto
1
1名古屋大學外科
1Medical Dept., Nagoya Univ.
pp.398-403
発行日 1949年11月1日
Published Date 1949/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200077
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第19世紀の始めの70年までが,リスター消毒法施行前期に於て最高の腦外科の發達を來したのであるが,吾々は手術後にあつた細菌感染に依つて起た,敗血症の一大流行によつてなやまされた。故に腦の外科は頭蓋骨々折の外科に限られなければならなかつた。Robert Hudson(1877)の書いた"頭蓋骨陥凹骨折に於ける穿顱器の使用法"中に次の樣な事が書いてある。
『外科文献中には,穿顱器を頭蓋骨の陥凹骨折に對して使用した以前の進歩した事に對して用いられた事を聞かぬ。例えば頭蓋外傷のあつた時負傷した坑夫の仲間によつて聞かれる第一の問いは,大體同一であつた,『頭蓋骨が折れましたか』という問である。その時『はい。そうです』と答えると,次の問いは,『ではいつ頭に穴を開けますか』出來事の大多數は發破の使用によつておこつた。此等の出來事は安全フィーズの發明の前に起たのであるから18世紀の未期では今日に於けるよりも,穿顱術が多く施行せられた。その頃の外科醫は1週間少くとも1〜2回の穿顱手術がなされた。穿孔された頭蓋の大多數は治癒した。早期の手術ではそう努力しなくとも,英國の樣な大西洋上から吹いて來る軟風のある處では空氣も清淨であつて手術創はよく治癒した。であるから何も敗血症をそう恐るゝ必要はなかつた。であるから複雜骨折の時の,陥凹骨の擧上手術は何もそう困難な或は危險な手術とは考えられなかつたのである。
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