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はじめに
遺伝性痙性対麻痺(hereditary spastic paraplegia:HSP)は,緩徐進行性の両下肢の痙性と筋力低下を主徴とする,遺伝性の上位運動ニューロン変性疾患の一群である。両下肢の痙性と筋力低下のみを主症状とする純粋型と,痙性対麻痺に加え視神経萎縮,難聴,錐体外路症状,小脳性運動失調,精神発達遅滞,痴呆,けいれん,遠位筋萎縮,末梢神経障害などの神経学的異常,あるいは網膜色素変性症,白内障,魚鱗癬,合指症などの非神経学的異常を伴う複合型12)に大きく分類される。遺伝学的には常染色体優性遺伝(autosomal dominant:AD),常染色体劣性遺伝(autosomal recessive:AR),性染色体劣性遺伝(X-linked recessive:XR)の3型に大別される。
HSPは臨床的にも遺伝学的にも不均一な疾患群である。脳梁菲薄化と痙性対麻痺のオーバーラップするものが必ずしも同一遺伝子座の異常によるとは限らず,逆に同一遺伝子座の異常においても脳梁の菲薄化を伴う場合と伴わない場合がある14)。岩淵ら10)は,痙性対麻痺と痴呆を主徴とし,病期の進行とともに痙性四肢麻痺に至り,筋萎縮などの複合症状を呈する脳梁の菲薄化を伴う常染色体劣性遺伝性痙性対麻痺(ARHSP with thin corpus callosum:ARHSP-TCC)の一群が存在することを提唱している。この範疇に入ると考えられる症例は,学会報告例を除くと本邦において現在までに約30例が報告されている3~8,10, 13, 15~19, 21, 23, 24, 27, 28)。その一部は15q13-q15に連鎖することが明らかにされ20),同一の遺伝子座に連鎖するHSPがSPG(spastic gait)11として登録されている(図)。 ARHSP-TCCは本邦以外にも,Martinezら14)の北米の1家系,イタリアの1家系,Ferrerら2)のスペインの1家系,Coutinhoら1)のポルトガルの1家系,およびTeiveら25)のヨーロッパ系ブラジル人の1家系などが報告されている。
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