Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- サイト内被引用 Cited by
■はじめに
大麻草(Cannabis Sativa L)がもたらす向精神作用については古くから知られており,数千年の昔から宗教的儀式のためや日常的嗜好品として用いられてきた。現在でもアジア,アフリカ,南北アメリカ,ヨーロッパ,オセアニアなどほとんどの国々に大麻を使用する習慣が広がっており,全世界では数億人が大麻を使用したことがあると推定されており,違法性薬物の中では最も多く使用されているものと考えられる。日本では第二次大戦前は精神的な効果を求めて大麻を使用する習慣はなかったが戦後になってから駐留軍により大麻が持ち込まれ,初期には音楽関係者など限られたグループの中で用いられてきた。しかし近年は海外留学などで大麻使用を経験する者が増えており日本国内でも次第に広い階層に広まっている11)。大麻事犯での検挙件数は1970年代から増加し始め,1988年には1,500人を超えて最近ではほぼ横ばいで推移している。しかし日本では大麻の栽培,所持,販売および使用は大麻取締法により厳しく規制されており,現在のところ大麻の規制が成功している数少ない国の1つであろう。
大麻の向精神作用を持つ主成分は△9-tetrahydrocannabitol(THC)であるが,産地や製剤の種類により含有量は異なる。また大麻製品は世界各地で様々な名称で呼ばれている。アメリカ圏では乾燥大麻の葉や雌花を刻みこんだものをマリファナ(marijuana)と呼ぶ。インド圏ではガンジャ(ganja),バング(bhang),チャラス(charas)と呼び,この順に純度が高くなる。南アフリカではダッガ(dagga),中近東では大麻樹脂をハッシシ(hashish),有効成分を抽出し液状にしたものはハッシシ・オイル(hashish oil)と呼び高純度のものである。このほかにも多数の名称や俗名が存在するが,本論文では特に断らないかぎり「大麻」または「カンナビス」と呼ぶことにする17)。
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.