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はじめに
不眠症はおおよそ10〜20%の有病率を有し,半数程度が長期経過をたどる疾患である10)。不眠症は日中の機能低下を伴い,うつ病や不安障害などの精神疾患や生活習慣病をはじめとするさまざまな身体疾患を合併することから,積極的な予防・治療戦略が求められている。不眠症の治療には主にベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動性睡眠薬が用いられてきたが,近年長期投与に伴う安全性や,高齢者への多剤投与に対する危惧が国際的な高まりをみせ,わが国でも睡眠薬の投与規制が強まりつつある。BZD受容体作動薬とは異なる機序の睡眠薬も開発・上市されつつあるが,国際的には不眠症の心理行動的病態特性上,非薬物療法が推奨されており,本邦においても治療体制の整備が求められている。
2013年に改訂された,米国精神医学会の『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition:DSM-5)2)以降,不眠症は原発性と続発性の区別が撤廃され,薬剤性に生じているものを除き,不眠症の診断に他疾患合併の有無は重視されなくなった。これには,続発性不眠であっても原発性不眠と治療戦略に大差なく,中核病態にかかわる心理行動学的特性に共通点が多いためである。2014年に改訂された睡眠障害国際分類第3版(International Classification of Sleep Disorders, Third Edition:ICSD-3)1)でも,DSM-5と同様に原発性と続発性の区別が薄れ,参考として心理行動学的・生理学的特徴に従った慢性不眠症のサブタイプ分類(表)を,第2版(ICSD-2)を踏襲し記載するにとどめており,いずれのサブタイプも精神生理性不眠を中核とした心理行動特性を共有する近親病態として理解することを推奨している。
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