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はじめに
脳画像(brain imaging)あるいは神経画像(neuroimaging)の包含するモダリティは,現在では非常に多種多様であるが(表),その共通する基本的特質は,生きた人間の脳の構造や機能を(間接的ながら)可視化できるということである。「脳画像の発展は統合失調症の理解に何をもたらしたのか?」という問いは,やや乱暴な言い方をすれば,「統合失調症患者の脳において何が生じているかがどこまで分かったか?」ということにほぼ等しい。
クレペリンは,統合失調症が人格の内的関連の解体と情意の障害を特徴とする精神荒廃に至る経過をとることは避けがたく,その背景には脳構造の変化があると想定していた。統合失調症における脳構造の変化を見出すべく,20世紀前半に神経病理学の研究者たちによって多くの努力が傾注されたが,客観的で再現性のある所見を見出すことができなかった。しかし,20世紀の終わりになって,X線コンピュータ断層撮影(CT)や磁気共鳴画像(MRI)などの脳画像診断技術が進歩し,統合失調症における脳構造の変化について,ようやく再現性のある研究結果が得られるようになった。ちなみに,神経病理学の代表的な教科書であるGreenfield's Neuropathologyにおいて,しばらく割愛されていた統合失調症の章は1997年の第6版において復活したが,その多くは脳画像所見に関する記述で占められていた。すなわち,脳画像は,想定されていながらも客観的には示し難かった,統合失調症における脳構造変化の存在を確認することに大きく貢献したと言える。また,このような脳画像研究の進展が,新しい神経病理学的研究の端緒ともなった。
本稿では,脳画像研究が私たちの統合失調症の理解に与えた影響について,主にMRIなどの脳構造画像研究の進展を振り返りながらまとめたい。
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