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はじめに
統合失調症患者の社会機能に及ぼす影響に関しては,その中核症状ともいえる認知機能障害が,精神病症状以上に重要な要因であると考えられている4,5)。統合失調症の認知機能障害は広範囲な領域におよび,注意・遂行機能・記憶・言語機能・運動機能などの領域が特に注目されている。認知機能の評価においては,これまで,各認知機能領域を評価する幾つかの検査を目的に応じて組み合わせた神経心理学的テストバッテリー(NTB)が用いられてきた。しかし,NTBを用いた評価は,通常専門的な知識を要し,高価で時間を要するものであった。一方,統合失調症の主要な認知機能領域を簡便に評価し得る尺度は,日常臨床および研究において有用と思われる。
我々は認知機能の客観的評価のため,統合失調症認知機能簡易評価尺度(Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia;BACS)の日本語版(BACS-J)を過去に作成した7,8)。一方,このような認知機能の変化に加え,機能的予後に対する表面的妥当性を持つ評価尺度(co-primary measure)の候補として,Measurement and Treatment Research to Improve Cognition in Schizophrenia(MATRICS)委員会10)は,エキスパートの推薦に基づき,4つの評価尺度を提言した。そのうち,社会的能力の評価尺度としてMaryland Assessment of Social Competence(MASC)2)とUniversity of California at San Diego(UCSD)Performance-Based Skills Assessment(UPSA)12)の2つが,また,面接に基づく認知機能評価尺度としては統合失調症認知評価尺度(Schizophrenia Cognition Rating Scale,SCoRS)9)と統合失調症における認知機能障害の臨床的総合評価尺度(Clinical Global Impression of Cognition in Schizophrenia;CGI-CogS)13)の2つが選択された。また,これら評価尺度の計量心理学特性は,いずれも容認できるものであったと報告された6)。このうちSCoRSは,患者用,介護者用および評価者用フォームの3部で構成され,記憶,学習,注意,ワーキングメモリ,問題解決,処理/運動速度,社会認知および言語の8つの領域を評価する20項目と全般評価からなり,各項目はそれぞれ4段階で評価される。今回我々は,SCoRSの臨床応用への有用性に着目し,原著者の許可を得たうえでその日本語版(SCoRS-J)を作成した。なお,SCoRS-Jのcopyrightは,Duke University Medical Centerが所有している。
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