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特集 「統合失調症」再考(Ⅱ)
分子遺伝学の発展は統合失調症の理解に何をもたらしたのか?
How Has the Progress of Molecular Genetics Shaped our Understanding of Schizophrenia?
吉川 武男
1
Takeo YOSHIKAWA
1
1国立研究開発法人理化学研究所脳科学総合研究センター
1RIKEN Brain Science Center, Wako, Japan
キーワード:
Genetic architecture
,
Shared genetics
,
Spectrum
,
Schizophrenia
Keyword:
Genetic architecture
,
Shared genetics
,
Spectrum
,
Schizophrenia
pp.1115-1120
発行日 2017年12月15日
Published Date 2017/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205500
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遺伝子ハンティングの勃興(1980年代後半〜)
分子遺伝学の「分子」とは,セントラルドグマの系譜でいう遺伝子の実体であるDNAを念頭に置いている。遺伝学では,表現型の成り立ちに関して「X(表現型)=G(遺伝要因)+E(環境要因)+G×E」と考える。種(個体)の全ゲノム配列が未解明の時代でも,モデル生物では特定の遺伝子についてはクローニングなどによりDNA配列が決定され,その遺伝子の働きや遺伝子操作は可能であったので,分子遺伝学は早い時期から興隆をみた。ヒトの場合,単一遺伝子のDNA塩基配列異常はメンデル型疾患で一つひとつ解明が進んでいた。疾患遺伝子の機能,生化学的手がかりがない中,ポジショナルクローニング法というアプローチで,デュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因遺伝子dystrophin7),囊胞性線維症の原因遺伝子CFTR12,14),神経線維腫症1型の原因遺伝子NF1の同定に成功した頃が2,19,20),ヒト単一遺伝子疾患研究の絶頂期の始まりで,1993年のハンチントン病責任遺伝子同定18)がハイライトのひとつとなった。単一遺伝疾患の責任遺伝子の同定は,21世紀になってから新しいテクノロジーの登場(後述全エキソン配列解析の部分参照)により再びスピードアップした。
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