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統合失調症のもたらす社会生活の障害—特徴的な障害は何か
統合失調症の人は,その障害の特質からさまざまな社会生活への影響がある。たとえば結婚や就学,就労といったいわば当たり前のことが,大きな困難を伴う課題となってしまうのである。わが国では有配偶者率は男性では一般人口の3〜4割程度との調査が多く,女性ではいったん婚姻する者はもっと多いものの,離婚率が高い8)。一般企業への最低賃金以上の就労(一般就労)をしている人の割合は,一般人口のおおよそ2〜3割程度と言えるだろう9)。一般就労は,統合失調症では他の精神障害に比べてもかなり低率である。なぜ社会生活が困難になるかについては,対人状況における陽性症状,自閉・感情の平板化などの陰性症状,現実的な動機の持ちにくさ,ストレスにもろく安定した活動が困難であること,それに認知機能障害などが影響している。まずは社会生活の特徴を整理してみたい。
1点目として,日常生活全般に広範な障害がみられることが挙げられる。そしてその障害は認知機能障害との連関が想定される。連関というあいまいな表現を用いたのは,素因に規定された脆弱性,発症前までの社会生活からの学習性の障害,発症後の進行性の機能低下,発症後の不十分な社会生活に基づく「廃用」性の障害,現存する陰性症状などの妨害要因による能力低下などが複雑に絡み合って,現在の「障害」が形成されているからである。丹羽ら16)は,社会生活上のさまざまな機能を,より機能障害に近い素因依存性・要素的な機能で,治療や環境の影響を受けにくいものから,より生活障害に近く経験や学習により変化し得る統合的な機能で,治療により変化しやすいものまで一連のスペクトラムで考えた。
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