シンポジウム 現代における精神医学研究の課題—東京都精神医学総合研究所開設記念シンポジウムから
組織病理学の立場から
猪瀬 正
1
1横浜市立大学医学部神経科
pp.936-940
発行日 1974年11月15日
Published Date 1974/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202237
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本日のシンポジウムは,わが国で最初に設けられた都立総合精神医学研究所の開所記念ということで,そのシンポジストの1人に選ばれたことは,大変光栄に思うしだいである。想えばわれわれは,精神医学研究所の設立を望みながら,実に長い年月を空しく過ごしてきたことは,非常に残念なことであった。
ドイツのMunchenの精神医学研究所はKraepelinがその基礎をつくってから,すでに50年をはるかに越えた。その伝統ある活躍によって,世界の精神医学界に多くの輝かしい貢献をしてきたことは周知のことである。わが都立精神医学研究所も,今後,ドイツのそれに劣らざる発展を遂げられることを,心から祈るものである。大学の精神医学教室や総合病院の精神科の現状をみるならば,組織上や経済上の事情から,いろいろな分野のエキスパートを揃えての総合研究は,ほとんど期待することができない。そのような情況を考慮に入れるならば,当研究所開設の意義は,きわめて大きく,その使命の重かつ大なることを痛感する次第である。精神医学の研究分野が多岐にわたって分化しつつあることはまことに驚異的であって,いわゆる門外漢には理解しかねることが余りにも多く,それらの知識の統合ははなはだむずかしい。このような,精神医学の臨床と基礎の研究成果は,しかるべき時期にintegrateして発表せらるべきであって,研究所にはまた,そのような任務が課せられていると思う。
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