今月の主題 消化器癌のトピックス
肝癌
病理の立場から
志方 俊夫
1
1日大病理学
pp.200-201
発行日 1977年2月10日
Published Date 1977/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207066
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肝炎性肝硬変と肝細胞癌
厚生省の死因統計からいうと,肝癌は男女とも3番目に多発する癌ということになっている.もちろん,臨床的に肝癌と診断されたものの中には転移性のものも含まれる可能性は否定できないが,決して少ない癌ではない.世界的にみた原発性肝癌の地理分布はかなり特徴的であって,アジア・アフリカ地域に多く,ヨーロッパ・アメリカには少ないのである.この差は原発性肝癌でも癌細胞癌による差であって,肝内胆管癌にはそれほどの地域差はない.
肝細胞癌が肝硬変症と密接な関係があることは古くから知られていた.しかし,すべての肝硬変に肝細胞癌が合併するのではないことは,肝硬変の世界的な地理分布が上述の肝癌の地理分布と一致しないことからも明らかである.一番肝硬変の多発する西ヨーロッパの南の方の国々では必ずしも肝癌は多くはない.これは肝細胞癌が主として肝炎性の肝硬変に発生するのであって,アルコール性の肝硬変に合併することは稀なことによる.この事実は同一地域に異なった人種が混在している場合にも観察される.たとえば南アフリカでは白人の肝硬変症はアルコール性で,肝細胞癌を合併することは少なく,黒人のそれは肝炎性肝硬変で,高頻度に肝細胞癌を合併するのである.
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