Japanese
English
特集 脳血管性障害・I
脳動脈硬化の組織病理
Die Histopathologie der Arteriosklerose des Gerhirns
猪瀬 正
1
Tadashi Inose
1
1横浜市立大学医学部神経科教室
1Nervenklinik der Universität Yokohama
pp.317-324
発行日 1961年5月25日
Published Date 1961/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903916
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I.まえおき
脳の動脈硬化に関しては,すでに多くのすぐれた業績や綜説があるし,あらためて私がここに筆をとるほどのことはないのである。ことにその病理形態学については,病理学や神経病理学の教科書や叢書の中に充分に記述されているところであるから,私が何かをここに述べるとしても,全くの蛇足であるといわねばなるまい.
そこで私は,本課題のどこにどのような問題があるかを私の経験にもとづいて記すほかに手段はないと思う。精神病院や大学病院では,動脈硬化の脳をみる機会は決してまねではない。その際脳底動脈のあらこちにAtheromがあつて,その太さが一様でなく,しかも血管は全体に弾力を失つているといつた所見は,これまた目新しいものではなく日常鶴察する機会のあるところである。またそのような変化は,脳底動脈の幹だけではなく,脳の表画の動脈にまで及ぶことがある。ところでこれらの肉眼所見は,病理学で習得する大動脈硬化の像と何らことなるところはないし,組識学的にも,それと本質的な相異はない。すなわち動脈壁全体の厚さの増加,内膜におけるAtherom形成と線維芽細胞の増殖,そして内弾力線維の膨化と断裂といつた周知の諸特徴をもつている。ところで,脳の動脈小枝(Zweig)では,上にあげたような壁変化はみられないで,全く別個の病変ともみえる所見が見出される。
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