Japanese
English
特集 神経系の加齢
総論—病理学の立場から
General consideration on aging of the nervous system: From view point of pathology
猪瀬 正
1
Tadashi INOSE
1
1横浜市立大学医学部精神神経科
1Department of Psychiatry and Neurology, Yokohama City University School of Medicine
pp.625-629
発行日 1973年8月10日
Published Date 1973/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903526
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.まえおき
神経系という身体を構成する重要な組織系が,年齢とともに,どのように変化して行くかを,病理解剖学的に,系統的に検索を行なった研究業績は,まだほとんどないといっても過言ではない。現在,病理学的にクローズアップされている神経系の老化の問題は,むしろ,非常に特殊な,臨床病理学的な研究に端を発したといってよい。すなわち,Alzheimer1)が,「大脳皮質の独特の疾患について」という題名で,1907年に発表した論文が,その後の,神経系の老化の研究に,方向づけをしたのである。
19世紀の終り頃から,20世紀の初頭にかけて,精神病の組織病理学的研究が,Nisslの指導のもとに,強力に推進されたことは,周知のことであろう。その成果の一つは,いうまでもなく,動脈硬化性痴呆と老年痴呆との鑑別であった。脳に,動脈硬化や,それに基づく,血管性組織損傷がなくして,臨床的に高度の痴呆をみ,しかも脳の萎縮を示すものがあることがわかって,老年痴呆enile Demenzという疾患が確立されたのである23)。
Copyright © 1973, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.