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本年の5月にアメリカ精神医学会(American Psychiatric Association)からDSM-5が発表されました。DSM-Ⅳの刊行が1994年ですので,DSM-Ⅳ-TRをはさんだとはいっても実に19年振りの改訂ということになります。筆者はDSM-5のなかの専門分野の翻訳作業に携わってきましたが,作業が進むにつれて次第に憂うつになってきました。用語の問題もさることながら,今まで我々が行ってきた臨床とどのように整合性を図るのかということが課題にならざるを得ないからです。日本の精神医学も以前のような熱狂的とも言えるDSM信仰は下火になり比較的冷静な態度でDSMに対峙することができるようになりましたが,今回のような大きな改訂を迎えて当分の間は翻訳や解説などの動きが続くことが予想されます。診断基準の専門家ではない一般の臨床家は,やや複雑な改訂が行われた診断項目については急なハンドルを切らずに,改訂版をよく理解した後に徐々に移行していくというのが賢明な臨床的な姿勢であると考えています。
さて,本号は特集で「職場のメンタルヘルスと復職支援」が企画されています。五十嵐良雄氏が最初に総括されているように,気分障害,パーソナリティ障害,発達障害,気分障害の心理療法に焦点づけた精神医学からみたリワーク,医療経済的な立場や精神科産業医からみたリワーク,最後に精神科クリニック,精神科病院,地域障害者職業センター,などのさまざまな形態のリワークに適切に分類され,それぞれの分野において第一線で活躍されている専門家が執筆を担当され,読み応えのある内容に仕上がっています。精神科臨床にとってリワークは不可分の領域ですので,是非本特集をリワークについて見直す良い機会にしていただきたいと思います。
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