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編集後記
M. H.
pp.526
発行日 2010年5月15日
Published Date 2010/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101639
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今月号は「児童期における精神疾患の非定型性」を特集のテーマとして取り上げた。大うつ病,双極性障害,統合失調症,強迫性障害,解離・転換性障害,摂食障害,睡眠障害,と多岐にわたるが,どれも成人においてもきわめて重要な精神疾患である。是非はともかくとして,子どもでは成人の診断基準に準じて診断が行われており,それが子どもの精神疾患を論じる際の1つの限界になっていることは確かである。しかし現時点で,子ども特有の診断基準を作成し,臨床で応用するところまで漕ぎ出す勇気を持てないのがほとんどの専門医の本音なのではないかと思われる。特集では以上の限界のもとで論じられていることが前提としてあることをお断りしたい。しかし,本誌で児童期の障害が特集として取り上げられることは画期的なことであり,発達障害をはじめとして児童・青年期の問題を扱った論文の投稿や掲載が増えている状況を背景としてこそ可能であったと思われる。
偶然にも「巻頭言」は児童精神医学を専門とする本城秀次先生に執筆していただくことができた。氏と名古屋大学精神医学教室の歴史の一端が紹介されていて興味深い内容となっている。「研究と報告」でも1本は小中学生の攻撃性に関する論文である。本邦では貴重な疫学調査に基づいた報告である。2本目は遅発緊張病が強く疑われる機能性精神病の報告であるが,精神科臨床において神経学的所見と精神症候の両者を正確に把握することの重要性を改めて痛感させられる力作となっている。その他にも,遅発性呼吸性ジスキネジアの貴重な報告など読みごたえのある報告が続いている。今後も多くの方の投稿を期待したい。
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