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毎年,この時期になると本誌の「動き」欄に「精神医学関連学会の最近の活動」が掲載される。今回,樋口輝彦先生にご執筆頂いた巻頭を読んで驚いたが,1987年から四半世紀にわたって企画が続き,担当者も島薗安雄先生,大熊輝雄先生,高橋清久先生に次いで樋口先生で4代目である。関連学会の数も既に70を超えているが,本体である日本精神神経学会では専門医制度の発足と並行するように,毎年の総会の演題数も参加者数も急増し,総花的とはいえ内容もある程度担保されている現状を考えると,増えすぎた関連学会が本体の学会に少しずつ集約・統合されていってもよいのではないかという意見が出てきても不思議ではない。一方,参加すればデパートのように一通りの領域を見聞きできる精神神経学会総会ではなく,それぞれの専門領域や特定の疾病に特化した関連学会でじっくり研究発表や議論をしたい,という気持ちも十分に理解できる。あるいは個々の学会自体が社会的な活動として既に意義を有している場合もあるであろう。いずれにしても,本欄は善しあしはともかく,精神医学の多様性をよく反映しているように思われる。
展望に金氏らによるPTSDが掲載された。大震災後でもあり,子どもの虐待が社会的に大きな問題となっている現在,時宜を得たテーマである。内容は簡潔にまとめられており,PTSDに関する知識を得るには格好の総説である。研究と報告には3本が掲載された。テーマは自殺企図,水中毒,解離性体験尺度,とさまざまである。特に水中毒に関する論文では,関連する要因を詳細に分析しているが,その労力に頭が下がる思いである。短報と私のカルテからがそれぞれ2本ずつあり,いずれも臨床的に意義のある論文が並んだ。読者には是非,日常臨床の参考にしていただきたい。
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