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今月号から13回にわたって連載される「東日本大震災・福島第一原発事故と精神科医の役割」が始まります。本号ではご企画いただいた福島県立医大の丹羽真一先生による「連載開始にあたって」が掲載されました。丹羽先生がお書きになっているように,歴史上かつてない災害を経験し,その復興に精神科医がいかに関わっていたか,関わっていけたかを記録し,その実践を検証できるものとして後の世代に引き継ぐことが連載の目的です。このような臨床的にも学術的にもきわめて重要な課題を本誌で扱うことができ,しかも編集委員として多少なりともその作業に関わることができることを誇りに思います。未だ現在進行形の被災者の方々の日々と,復興にさまざまな形で携わった精神科医の先生方の活動に思いをめぐらしながら拝読していきたいと思います。つづいて資料欄に掲載された濱中淑彦先生の「“Schizophrenie”(統合失調症:E. Bleuler, 1911)より100年(2011)」は重厚な論文です。統合失調症概念について,現在までの100年あまりの変遷をBleulerを軸に詳細に記述されています。精神病理学や力動精神医学,神経心理学などに,現代の生物学的視点を加えて網羅しながら,非常に多角的に統合失調症概念の変遷を俯瞰しています。特に中堅から若手の精神科医の方々にはじっくり読んでいただきたい論文です。
展望では仁王先生が双極性障害概念の変遷について解説され,読者が双極性障害について改めて整理する良い機会を与えてくれています。濱中先生の統合失調症と合わせると,本号だけで精神科の2大疾患の概説が掲載されていることになります。資料欄に掲載された,都立松沢病院の夜間休日救急入院患者の21年間の変化に関する論文も臨床的に貴重な資料です。その他,研究と報告,短報,資料,私のカルテから,と読み応えのある論文が揃っています。
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