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特集 循環器疾患の遺伝子診断と遺伝子治療
心血管系への遺伝子導入の進歩—動物モデルを中心に
Molecular Intervention for Injured Arteries
山本 博昭
1
,
上野 光
1
Hiroaki Yamamoto
1
,
Hikaru Ueno
1
1九州大学大学院医学系研究科・循環器内科
1Department of Cardiovascular Medicine, Graduate School of Medical Sciences, Kyushu University
pp.1207-1214
発行日 1999年12月15日
Published Date 1999/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404910115
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はじめに
虚血性心疾患に対する診断・治療技術は近年大きく進歩したが,急性冠動脈症候群の発症予防,インターベンション後の再狭窄の阻止,梗塞に陥った後の心機能低下の改善などの課題は,依然として多くが未解決のままである.うっ血性心筋症に対しては移植以外有効な方法がないのが現状である.
ウイルス系ベクターなどの開発により遺伝子導入効率が飛躍的に高まり,生体血管壁への遺伝子導入が現実のものとなってきた.ベクターと呼ばれる乗り物の中に標的分子を遺伝子(DNA)の形で組み入れこれを細胞のなかに導入すると,核内へ移動したベクターから標的分子のDNAがmRNAとして読み取られ,やがてリボソームという工場で蛋白となる・一度の遺伝子導入により病変局所では高濃度の蛋白発現がかなりの期間持続する.このため分子レベルでの病態解析が可能となり,さらにより有効でかつ全身作用の少ない治療手段(遺伝子治療)となる可能性もある.実際,動物モデルを用いた実験では遺伝子導入による病態修飾が可能であることが示された.血管形成術(PTCA)やバイパスグラフトに伴う血栓症や再狭窄など,安全で有効な薬物療法が確立していない難治性血管病への応用が期待されている.閉塞性動脈疾患や心筋梗塞後の梗塞サイズの減少を目指した血管新生療法は米国ではすでに臨床試験の段階に入っている.治療法として発展するには,病態の解明とそれに基づく標的遺伝子の選定,安全かつ導入効率の高いベクターと病変局所に目的遺伝子を効率的に運搬できるデリバリーシステムの開発が鍵となる1,2).それぞれについて概説を試みる.
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