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特集 循環器疾患の遺伝子診断と遺伝子治療
心血管系への遺伝子導入の進歩—臨床応用の現状
Advances in Gene Therapy for Cardiovascular Diseases
新井 昌史
1
Masasi Arai
1
1群馬大学医学部第二内科
1Second Department of Internal Medicine, Gunma University School of Medicine
pp.1215-1224
発行日 1999年12月15日
Published Date 1999/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404910116
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はじめに
世界初の遺伝子治療は1990年にアデノシンデアミナーゼ欠損症の患者に対して行われた.遺伝子治療は当初,他に治療法のない生命を脅かす先天性,後天性の難治疾患をその治療対象とし,有効な治療法のない癌やHIV感染症の治療の切り札になるものと期待されていた.ところが実際に遺伝子治療が開始されてみると,これら疾患の治療成績は思ったほど芳しくないことがわかった.遺伝子治療への期待が大きかっただけに失望感も大きく,当時は,臨床応用は時期尚早であり,遺伝子導入技術の改善など基礎研究のレベルにもう一度戻るべきであるとの議論もされていた.
このような状況の中,1994年12月から閉塞性動脈硬化症に対する遺伝子治療が始まった.癌やHIV感染症への遺伝子治療とは対照的に,閉塞瞬生動脈硬化症に対する治療成績は予想以上に良好で,血管系疾患は遺伝子治療の良いターゲットと考えられるようになった.また,これらの治療成績の比較をもとに遺伝子治療の適応症が再検討されるようになり,現在では,遺伝子治療は手探りの段階を経て,初期の発展期に入りつつある.
本稿では,心血管系への遺伝子治療の臨床治験の現況と成績,心血管系に対する遺伝子治療が他の疾患への遺伝子治療と異なる点などについて述べたい.
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