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特集 遺伝子改変動物から神経変性疾患へのアプローチ
遺伝子改変動物からみたプリオン病研究の進歩
Recent Advances in the Prion Animal Models
岸田 日帯
1,2
,
戸田 宏幸
1,2
,
金子 清俊
1
Hitaru Kishida
1,2
,
Hiroyuki Toda
1,2
,
Kiyotoshi Kaneko
1
1国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第7部
2横浜市立大学医学部神経内科
1Department of Cortical Function Disorder, National Institute of Neuroscience, NCNP
2Department of Neurology, Yokohama City University School of Medicine
キーワード:
prion
,
transgenic mouse
,
knock-out mouse
,
protein X
Keyword:
prion
,
transgenic mouse
,
knock-out mouse
,
protein X
pp.821-827
発行日 2001年9月1日
Published Date 2001/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901828
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はじめに
プリオン病は,ヒトにおけるkuru, Creutzfeldt-Jakob病(CJD),Gerstmann-Sträus-Scheinker症候群(GSS),家族性致死性不眠症(FFI),ヒツジにおけるスクレイピー,ウシ海綿状脳症(狂牛病,BSE),伝播性ミンク脳症(TME)などの神経変性疾患の一群の総称である。近年,英国における変異型CJD(vCJD)や本邦でのヒト乾燥硬膜による医原性CJDの存在が明らかになり,プリオン病はあらためて大きな注目を集めている。
同疾患群は長年にわたりスローウイルス感染症と考えられてきたが1),1982年Prusinerは本疾患群の原因には蛋白質のみが関与するという概念を提唱し,その病原因子をプリオン蛋白(PrP)と命名した2)。PrPには正常個体に発現している正常型プリオン蛋白(Prpc)と,異常なアイソフォームである異常感染型プリオン蛋白(PrPSc)とがある。両者は同一のプリオン遺伝子(Prnp)にコードされる蛋白で3),アミノ酸の一次構造に差は認められないが,その高次構造が異なっている。すなわちPrpcのβシート構造が3%以下であるのに対しPrPScでは40%以上に増加し,後者はプロテアーゼ抵抗性を有する。PrPScを鋳型としてPrpcの高次構造がPrPSc型に変化することが,PrPScの変換機構と考えられている4)。
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