Japanese
English
綜説
呼吸器疾患の遺伝子治療の現況
Gene Therapy for Pulmonary Disease
押川 克久
1
,
北村 諭
1
Katsuhisa Oshikawa
1
,
Satoshi Kitamura
1
1自治医科大学呼吸器内科
1Department of Respiratory Medicine, Jichi Medical School
pp.1205-1211
発行日 1998年12月15日
Published Date 1998/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404910099
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はじめに
1990年にアデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症を対象として本格的に最初の遺伝子治療が米国で施行されてから8年が経過するが,その間さまざまなストラテジーが考案され,活発な臨床研究が展開されている.TMC Worldwide GeneTherapy Enrollment Report, End 19961)によると,1996年12月現在で,欧米を中心に2,103例に遺伝子治療が施行され,1995年12月に比し,1,000例近く増加しており,いかに遺伝子治療が精力的に行われているかがうかがえる.その内訳は悪性腫瘍が1,446例(68%)と最も多く,その他AIDS 390例(18%),嚢胞性線維症176例(8%)であり,さまざまな疾患を対象に遺伝子治療が試みられている.悪性腫瘍では,固形癌が91%を占め,悪性黒色腫,転移性腫瘍,脳腫瘍,乳癌,腎癌が多いが,肺癌(非小細胞肺癌;3%・小細胞肺癌;1%以下)に対しても施行されている.遺伝子導入方法は,ウィルスベクターではレトロウィルスが最も多く(56%),次いでアデノウィルス(10%),アデノ随伴ウィルス(1%)であり,その他,リポソームが比較的よく用いられている.
このように様々な形で遺伝子治療が考案され実施されるなかで,本稿では特に呼吸器疾患の遺伝子治療を中心に,臨床試験や動物モデルでの実験成績における過去の報告および最近の知見について概説する.
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