Topics Respiration & Circulation
循環器疾患領域の大規模試験
佐藤 洋
1
1大阪大学医学部第一内科
pp.207-208
発行日 1999年2月15日
Published Date 1999/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901855
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■最近の動向 診断と治療法の選択は,個々の医師の経験も重要であるが,臨床的evidenceに基づいて決定される必要がある.Evidenceとは,より普遍的な状況において少数の目標を設定した大規模な臨床試験により得られる.文献紹介に取り上げたHOT試験は,従来より臨床上の大問題であった高血圧はどこまで降圧すべきかという命題に真正面より取り組んだ画期的試験であったといえる.試験結果は世界中に大きなインパクトを与えたが,それ以上に問題であるのは,このような大規模試験が単に多施設であるだけでなく多国籍な試験に変貌しつつある一方,本邦の機関,施設が参加していない点である.近々,良好な結果の公表が予定される心不全に対するスピロノラクトンの効果を検討したRALES試験には,本邦より参加があったが,その貢献度(症例数)は必ずしも高くないと聞く.また,2番目に紹介したIIb/IIIa阻害薬も国内で経口投与可能な薬剤が開発されつつあるが,国内での試験状況は欧米に比し遅れている.迅速に多国籍の大規模試験に対応できる臨床的基盤を早急に確立すべきと考える.また,臨床的evidenceは,治療薬にのみ求めるものではない.循環器疾患が生活習慣病であるならば,生活習慣の中に発症の原因,誘因が潜み,また対策を見出すべきである.3番目の論文は,食事習慣に対応策が存在することを示唆するが,製薬メーカーに依存しない大規模臨床試験も行う必要があることを示している.
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