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特集 慢性心不全治療の新しい可能性を探る
Megatrialを超えて—治療目標の設定
Implication of the Large-scale Clinical Trials for Treatment of Heart Failure
篠山 重威
1
Shigetake Sasayama
1
1京都大学医学研究科循環病態学
1Department of Cardiovascular Medicine,Kyoto University Postgraduate School of Medicine
pp.5-11
発行日 1999年1月15日
Published Date 1999/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901824
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現在,心不全という病態は血行動態的な異常ではなく,予後と生活の質が障害された状態と考えられるようになり,心不全治療の究極の目的は患者の生命の予後を改善することに向けられている.ある治療が予後に及ぼす影響を評価するには,個々の患者の観察だけでは不可能で,大規模多施設共同試験が必要である.しかし,このような大規模臨床試験の成績を日常診療にどのように還元するかという点に関しては,各々の医師が個々の患者の病態と治療に対する反応を考慮に入れて独自に判断しなければならない.すなわち,大規模試験でリクルートされる患者は均一ではなく,死亡率や予後に関する総体的な効果がすべての患者に当てはまるとは限らない.また,プラセボだけでも患者の症状が改善される確率は侮れないものがある.
今回の特集では,大規模試験が効果のある薬剤を拒絶する場合があり,これを克服するにはどうすればよいかを論ずるようにという依頼を受けた.しかし,筆者は大規模試験こそがある薬物の有効性を示す唯一の手段であり,治療のガイドラインは全てその成績を基にして作成されねばならないと理解している.最近,よく引用される“エビデンスに基づく医療”のエビデンスとは大規模試験の成績に他ならない1).したがって,この項では大規模試験とはどのような意味を持つかを考え,その成績を正しく解釈して臨床治療に応用するために考慮すべき事柄を述べたいと思う.
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