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はじめに
一般にリンパ系は,脈管系に属するリンパ管(lymphatics)と,その経路に介在するリンパ節を中心とするリンパ組織(lymphoid tissue)からなる.広義には脈管外における体液循環も含まれるが,これは組織内における体液や微細粒子の移動に重要であり,肺リンパ系は本特集のテーマである「肺における水分移動」において中心的な役割を担っている.
肺においても他の臓器と同様に血管内と間質の間で体液の移動があり,正常状態では血管内外のこの移動は,常に血管内から間質へ濾過されており,濾過された体液は主として肺リンパ循環により体静脈へと灌流されている.
肺水腫は肺血管外での異常な液体貯留と定義される1).肺水腫液は以下のルート,すなわち,1)肺リンパ系,2)肺および気管支循環系,3)胸腔,4)縦隔,5)気管支系により排除される1).各々のルートでの排液の機序およびこれらルート間での排液に関与する重要度について未だ不明な点が多い.肺リンパ液を介しての排液の機序は,以下に述べる肺リンパ動態の解析よりある程度解明されている.
一方,肺水腫はその発生機序により肺毛細管圧の上昇によるhigh-pressure pulmonary edema(HP)と肺血管の透過性亢進によるincreased—permeability pulmonary edema(IP)に大別される1,2).前者は左心不全で代表される心原性肺水腫であり,後者は成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)3,4)で代表される.特にIPでの肺水腫の発生機序は,未だ不明3,4)な点が多い.この両者を鑑別することは臨床的に重要であり,水腫液の蛋白濃度測定である程度の鑑別は可能5)であるが,肺水腫を中心とする肺水分平衡の研究に肺リンパ動態の検討は有意義である。
本稿では肺水分平衡における肺リンパ循環,特に肺リンパ動態の意義を中心に述べたい.
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