Japanese
English
特集 肺における水の動態
水負荷
Hypervolemic Overhydration with Hemodilution
田中 博之
1
Hiroyuki Tanaka
1
1帝京大学医学部救命救急センター
1Trauma and Critical Care Center, Teikyo University School of Medicine
pp.713-717
発行日 1996年7月15日
Published Date 1996/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901286
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はじめに
(どのような病態を論じるか)
臨床医が症例を指して「水が多い」と指摘する場合,多くはその症例がhypervolemiaの状態にあることを意味する.しかし,本稿で「水負荷」としているのはこの「水が多い」病態とは異なる.ここで述べるのは血中の水が相対的に増える状態,すなわち血漿が希釈されかつ循環血液量も増大した病態を念頭においた.したがって「水」によって血漿が希釈され,さらに「負荷」となる病態のなかで心疾患や呼吸器疾患などによって引き起こされるものを除外すると,代表的な病態として慢性腎不全が取り上げられる.
慢性腎不全が「水負荷」となる機序は腎機能が障害されて水・Naが貯留することによって細胞外液・循環血液量の増加することによる.この循環血液量の負荷は心臓に対する前負荷の増大を意味し,慢性腎不全症例がうっ血性心不全傾向を示す最大の原因である.しかし,腎性貧血の存在によって血液粘度が低下すること(希釈)や組織への酸素供給不足による末梢血管の拡張を来すこと,さらにはレニンその他の血管作動性物質の影響を受けるなど,心臓疾患に起因する通常の心不全とは病因が異なるためその発症機序はより複雑となる.
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