Japanese
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特集 気腫化病変の早期診断をめぐって
生化学的検査による気腫化早期診断
Biologjcal Markers for Early Diagnosis of Pulmonary Emphysema
別役 智子
1
Tomoko Betsuyaku
1
1北海道大学医学部第一内科
1Department of Internal Medicine I, Hokkaido University School of Medicine
pp.257-262
発行日 1996年3月15日
Published Date 1996/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901213
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はじめに
肺気腫はほとんどが中高年以上の喫煙者に発症する疾患であり,今後高齢化社会を迎えるにあたりますます増加する傾向にある1).しかも進行性,不可逆性の難治性疾患であり,わが国における在宅酸素療法の基礎疾患として最も頻度が高い2).したがって,できるだけ早期に診断し,禁煙,生活指導を徹底して行うことが望まれている.本来,肺気腫は病理形態学的に定義された疾患である3).しかし,臨床的には,従来,自他覚症状や呼吸機能検査上の閉塞性換気障害,肺拡散能障害などの指標から総合的に診断されてきた.また近年は胸部CTの進歩と普及により,CT上の低吸収領域(low attenuation area:LAA)が,肺胞破壊の程度を形態学的に反映するとされ,早期診断における位置づけも研究されている.生化学的検査による気腫化早期診断への試みはいまだ試行錯誤の段階というのが現状である.肺気腫の病態生理を考えると,喫煙が肺気腫の発症に重要な影響を与えていることに疑う余地はない.しかし,同様な喫煙歴を有しながら,肺気腫を発症する人としない人がいるという事実から,喫煙に対する感受性の個体差が存在すると考えられる.この発症の個体差をより早期に,あるいは発症以前に反映している因子を追求していくことが肺気腫の生化学的診断法を研究していくうえで最も期待されることではないだろうか.
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