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特集 肺気腫―最新の研究成果と今後の方向性
気腫病変での遺伝子発現プロファイル
Gene Expression Profile in Smoking induced Pulmonary Emphysema
別役 智子
1
Tomoko Betsuyaku
1
1北海道大学大学院医学研究科呼吸器病態内科学
1Department of Respiratory Medicine, Hokkaido University School of Medicine
pp.455-459
発行日 2003年5月1日
Published Date 2003/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100652
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はじめに
肺気腫は,「肺弾性線維(エラスチン)の不可逆的破壊」と病理学的に定義され,慢性閉塞性肺疾患chronic obstructive pulmonary disease(COPD)の代表的疾患である.臨床的には2001年4月にWHO(World Health Organization)とNHLBI(National Heart Lung and Blood Institute)が中心となり,COPDの診断と治療についての指針GOLD (Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)が発表された1).ほとんどが中高年以上の喫煙者に発症する疾患であり,今後高齢化社会を迎えるにあたりますます増加する傾向にある.
近年,gene chipテクノロジーの革新により数万個単位の遺伝子の発現を同時に定量することが可能となり,様々な臓器,病態においてグローバルに遺伝子発現の変化を追跡することにより,病因となる遺伝子群を見つけるという試みが始まっている2).しかし,肺は数十種類の異なる細胞により構成される複雑な臓器である.また病的状態においては,集簇する細胞の種類,数も異なるため,肺全体としての遺伝子発現の研究には,その解釈に限界がある.細胞特異的,局在的な遺伝子発現の研究が期待されている.われわれは,マウスを用い,喫煙曝露から気腫化という病態への変化の過程で,肺全体として,あるいは気管支上皮細胞に,発現量が増加,減少する遺伝子プロファイルを経時的に解析することを試みている.
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