Japanese
English
特集 急性肺障害—薬物治療の可能性
急性肺損傷の免疫学的治療
Immunotherapy for Acute Lung Injury
鈴木 幸男
1
,
青木 琢也
2
,
山口 佳寿博
2
Yukio Suzuki
1
,
Takuya Aoki
2
,
Kazuhiro Yamaguchi
2
1北里研究所病院内科
2慶應義塾大学医学部内科
1Department of Internal Medicine, Kitasato Institute Hospital
2Department of Medicine, School of Medicine, Keio University
pp.11-18
発行日 1994年1月15日
Published Date 1994/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900792
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はじめに
急性肺損傷は肺を構成する細胞および組織の炎症による傷害の総称であり,その本態は血管内皮の障害による透過性亢進型肺水腫である.急性肺損傷は感染,外傷,誤嚥,ショックなど様々な原因によって生じるが,そのうち最も頻度が高く,また死亡率が高い原因疾患は敗血症,特にグラム陰性菌による敗血症である.そこで種々の動物にエンドトキシンや大腸菌を投与した実験モデルを用いて急性肺損傷の病態生理が研究されてきた.その結果,好中球やマクロファージなどの炎症細胞と種々のmediatorが互いに密接に関連しあって複雑なネットワークを形成し,急性肺損傷の発症に関与していることが明らかになってきた1).
従来より敗血症などによる急性肺損傷に対して抗生物質やステロイド2)を用いた治療や血液透析などの試みが行われてきた.それにもかかわらず,死亡率は依然として高く急性肺損傷の治療法は確立されていないのが現状である.そこで近年,急性肺損傷の発症に関与するエンドトキシン,補体,サイトカイン,接着分子などのmedi-atorに対するモノクローナル抗体を用いた治療が注目され,その知見が蓄積されつつある3).
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