Japanese
English
綜説
Myocardial stunningの病態生理とその臨床的意義
Pathophysiology of Myocardial Stunning and Its Clinical Significance
堀 正二
1
,
北風 政史
1
,
楠岡 英雄
1
,
鎌田 武信
1
Masatsugu Hori
1
,
Masafumi Kitakaze
1
,
Hideo Kusuoka
1
,
Takenobu Kamada
1
1大阪大学医学部第一内科
1The First Department of Medicine, Osaka University School of Medicine
pp.319-327
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900645
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はじめに
心筋虚血は,長時間持続すると,心筋細胞内外のアシドーシス,ATPやクレアチンリン酸の減少と無機リンの増加,Caイオンの増加,CPKの流出などの生化学的変化や細胞膜のbleb形成,ミトコンドリア内構造物の変性,細胞骨格蛋白や細胞外マトリックスの変性などの組織学的変化が生じ,最終的に心筋壊死に陥り,心ポンプ不全を来す1).ところが,比較的短時間の心筋虚血後に再灌流が得られると,組織学的・生化学的検索にて軽度な異常しか認められないのにもかかわらず,心筋収縮性のみ著明に低下し,しかもその回復には数日を要する.この虚血・再灌流による心筋収縮不全の病態は,1982年,Braunwaldらによって“myocardial stunning”と名付けられた2,3).近年,循環器病領域の研究者・臨床家が,この病態に大きな関心を寄せているのは,①臨床的にPTCA・PTCRなどにより虚血・再灌流がしばしばみられること,②その際に血流が十分得られても心機能低下の持続することがよく経験されること,③stunned myocardiumは虚血心筋の可逆・不可逆性変化の病態を解明するための興味ある病態モデルであること,に起因する.
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